プロジェクトストーリー
クラシックコンサートの企画。一見すると、金融の仕事とは程遠く見えるかもしれません。しかし、第四北越銀行がこのプロジェクトに込めたのは、単なる文化イベントの開催ではありません。新潟に、世界水準の体験を届け、地域で誇りを感じてもらうこと。学生、医療・福祉関係者、企業経営者、県外で活躍する新潟ゆかりの方々など、これまで交わる機会の少なかった人たちを、音楽を通じてつなぐこと。そして何より、従来の金融サービスだけでは届かなかった地域課題に、銀行自らが一歩踏み込み、新しい価値をつくること。このプロジェクトは、お客さまと地域の課題に向き合い続け、地域の未来に責任を持つ第四北越銀行だからこそできる、地域創生への新しい挑戦でもあるのです。多彩な経験を積み、地域創生事業本部に集まった3名のプロジェクトメンバーから、これからの地域創生の可能性について話を聞きました。



田村 裕樹Tamura Hiroki
2005年入行
白根支店で融資営業を担当し、その後は東京支店でプロジェクト・ファイナンスなどを担当。本店に異動後は広報業務や、企画部門での他行連携、投資家対応などを担当。2025年に現在の地域創生事業本部へ。

橋本 実咲Hashimoto Misaki
2015年入行
入行後は水原支店で窓口業務や、個人渉外を担当。行内公募でグループ会社の地域商社ブリッジにいがたに出向し、東京・日本橋での新潟のアンテナショップの立ち上げ・オープンに携わり、店長を経験。その後、事業開発企画部に異動し、銀行のSNSとオウンドメディア「マネーまるわかり」の運用を担当。2025年に現在の地域創生事業本部へ。

時田 澪Tokita Ryo
2017年入行
入行後は大野支店で個人営業を担当。その後糸魚川支店に異動し、法人営業を担当。企業の経営を伴走することに面白さを見出す。旅館のお客さまのSNS運用をサポートし、フォロワーを3,000人に伸ばすなど、地域企業の魅力発信にも携わる。2025年に現在の地域創生事業本部へ。
田村:銀行の地域創生の取り組みというと、企業誘致や大規模開発への投融資のような取り組みを思い浮かべる方が多いと思います。もちろんそれらはとても重要です。地域経済を支えるうえで、金融機関として果たすべき大切な役割です。でも、私たち第四北越銀行がこだわったのは、そこにとどまらない地域創生の形でした。地域課題は、年々複雑になっています。人口減少、若者の流出、地域医療の維持、地域の発信力不足。こうした課題に向き合うには、従来の金融サービスだけでは足りません。お金を動かすだけではなく、人をつなぎ、機会をつくり、地域の魅力そのものをつくり、動かしていく必要があります。だからこそ、金融の枠を越える取り組みが必要だと考えました。そして、やるならとことん、どこの銀行も、まだ本格的にはやっていないレベルに挑戦しよう。それが出発点でした。


橋本:でも、実際は、何をやればいいのか。これまでにまったくないようなゼロから新しい地域創生の形をつくるのは、こんなにも難しいとは思いませんでしたね。


田村:そんな矢先に、台湾のエバーグリーン・グループからお声がけいただいたのが、今回のきっかけです。世界的に著名な音楽家を迎えたクラシックコンサートを共同で開催しないか、というお話でした。銀行が大規模な音楽イベントを企画する。これまでであれば、例えば費用対効果の面などを考えると、ありえない話です。しかし、エバーグリーン・グループの一つ、エバー航空は、以前は新潟と台湾を結ぶ直行便を運航していたこともあり、地域と無縁ということではありませんでした。単なる音楽イベントではなく、台湾と新潟の交流を深める良い機会にもなる。とも考えました。
時田:私たちはその話を受けて、「新潟に世界水準の音楽体験を届けられる!」と興味を持ちました。新潟に住んでいると、東京や海外でしか体験できないような一流の文化芸術に触れる機会は、どうしても限られます。だからこそ、世界的なオーケストラの演奏を新潟で聴けるということには、大きな意味があると感じました。
橋本:一方で、ただ開催するだけでは、第四北越銀行がやる意味は十分ではありません。「なぜ銀行がやるのか」。そこを整理する必要があったので、実際に文化事業を行っている企業に話を聞きに行きました。そこで見えてきたのは、文化事業には、社会貢献やお客さまと関係性を深めることに大きな効果があるということでした。ただ、私たちはそこからさらに一歩踏み込み、地域創生につながる取り組みにできれば、第四北越銀行がクラシックコンサートを開催する意味が見いだせるのではないかと考えました。
時田:私たちが考えた目的のひとつは、学生や医療関係者、社会福祉に携わる方々など、地域を支える人たちに新潟の新しい魅力を感じてもらうことです。たとえば学生の皆さんには、進学や就職で一度新潟を離れたとしても、「学生時代に、地元で世界的なオーケストラの演奏を聴いたな」という記憶を持っていてほしい。その体験・記憶が、いつか新潟に帰ってくるきっかけのひとつになるかもしれない。医療関係者とそのご家族には、文化芸術に理解のある地域として、新潟に住み続ける魅力を少しでも感じてもらいたい。社会福祉の現場で日々尽力されている方々には、忙しい日常に心を休める時間を届けたい。音楽には人の心を動かす力があります。その力を地域の未来につなげたいと思いました。
田村:もうひとつは、新潟で文化に触れる機会をもっと増やしたいという想いがありました。私自身、美術館や博物館に行くことが好きですが、新潟では、世界水準の芸術や文化に日常的に触れる機会が決して多いとは言えません。だからこそ、今回のような体験を新潟で実現することには大きな意味があります。新潟でこんな体験ができるんだ、という新しい期待・可能性を示す取り組みだと思っています。






田村:私たちは、この公演が地域創生とともに、第四北越銀行の営業のあり方を変えるきっかけにもしたいと考えました。金融機関の営業というと、どうしても預金や融資、金融商品などの商品をご提案するイメージが強いと思います。もちろん、それも地域経済を支える、根幹を成す大切な仕事です。ただ、それだけではお客さまからすると、どうしてもセールスの話として受け止められてしまうこともあります。若手の営業担当者にとっても、最初の接点づくりに難しさを感じる場面があるかもしれません。でも、「今度クラシックコンサートを開催するのですが、ご興味はありませんか?」という一言があれば、自然に会話が生まれます。金融商品の話ではなく、音楽や地域の話から関係が始まる。そこに、この取り組みの大きな意味があると思っています。今回は営業店の皆さんに、「大切なお客さまだけでなく、今はまだお取引がなくても、これから関係を築いていきたい方をご招待してください」とお願いしました。銀行の営業は、商品を売るだけではない。地域の未来を一緒につくる仲間を増やしていく仕事でもある。そんな営業の新しい姿を、今回のコンサートを通じて形にしたい、その第一歩にしたいと考えました。
橋本:コンサートの話題をきっかけに関係性が深まり、そこから「この銀行なら、何かを一緒に生み出してくれるかもしれない」という期待や信頼をいただく。さらに、その信頼が新たな関係者とのつながりを生み、地域創生に向けた取り組みに共感し、ともに動く仲間が増えていく。そうした営業のあり方を、第四北越銀行では「関係性ビジネス」と呼んでいます。今回、東京と新潟の両方で開催するのも、この関係性ビジネスの輪を広げていきたいという考えからです。地域の課題が複雑になる中で、新潟県内だけで完結できることは限られていきます。首都圏の企業、人材、大学、専門家、そして海外とつながっていくことが、これからますます重要になります。東京公演では、普段お取引のない企業の方や、各界で活躍されている方々にもお越しいただく予定です。新潟の魅力を東京で伝え、新潟と首都圏をつなぐ。そこにも、第四北越銀行がやる意味があります。


時田:学生に向けた取り組みにも力を入れ、新潟県内の全大学を招待しました。また、県内で唯一音楽科を持つ高校の学生たちには、リハーサルに参加してもらい、プロの音楽家と直接触れ合う機会を設けました。さらに、その様子を大学生たちも公開リハーサルとして見学してもらう形にしました。結果、新潟県内の大学とのつながりを通じて、首都圏の大学にも輪が広がり、より多くの学生にこの音楽体験を届けることができたと感じています。学生たちの記憶に残る体験をつくること。新潟に誇りを持ってもらうこと。将来、新潟ともう一度つながるきっかけをつくること。そのための取り組みをしていきたいという想いで取り組みました。
橋本:もちろん、最初から手応えがあったわけではありません。「1万円もするチケットを買ってもらえるのか」「招待しても本当に来てもらえるのか」という不安もありました。しかし、実際には多くのお客さまに足を運んでいただけることになりました。これまで機会がなかっただけで、世界的な音楽に触れてみたいという想いは、地域の中に確かにあったのだと実感しました。私たちは、その機会をつくる役割の一翼を担えたのだと思います。
田村:ニューヨーク・フィルハーモニックで活躍されたヤープ・ヴァン・ズヴェーデン氏の指揮のもと、世界的なバリトン歌手であるトーマス・ハンプソン氏がソリストを務め、ストラディバリウスなど希少な楽器が音色を奏でる。これほどの公演は、これまで新潟ではなかなか実現できませんでした。だからこそ、私たちがこの公演を届ける意味がある。新潟に、世界とつながる体験を生み出す意味があると感じています。


橋本:以前所属していたブリッジにいがたは、「地域商社」として、新潟のさまざまな一次産品や加工食品、工芸品の販路開拓支援を行っています。新潟のアンテナショップの店長時代に多くの生産者さまや企業さまと関わる中で、「新潟ってこんなにも魅力があるのに、その魅力を県外に十分発信しきれていないな」と感じていました。だから今回は、音楽を届けるだけではなく、新潟の食や文化の魅力も一緒に届けたいと考えました。首都圏の企業や人とつながる場に、新潟らしさをしっかり盛り込む。そこにもこだわりました。
田村:会場のバーで提供する日本酒も、店長時代のつながりから実現したんですよね?
橋本:はい。クラシックコンサートでは休憩時間にバーでお酒を楽しむ文化があります。そこで、つながりのある酒蔵さまにお願いして、コンサートの開演前後にバーで新潟の日本酒の提供が実現しました。また、開演前のレセプションパーティーでは、新潟の食材を使った料理も提供します。音楽を楽しんでいただくだけでなく、新潟の食や文化にも触れていただける場としました。


時田:さらに、2026年4月にブリッジにいがたが観光振興事業を立ち上げ、旅行業免許を取得したことから、今回タッグを組んで台湾から来られる楽団の皆さまの移動や宿泊、食事の手配なども行いました。国を越えたやり取りなので調整が難しい場面もありますが、演奏して終わりではなく、新潟を知り、新潟を好きになって帰っていただき、次の新しいきっかけを創出する。そこまで含めて、このプロジェクトだと考えています。
橋本:そうですね。ここまで企画・運営に踏み込む取り組みは、金融機関としても珍しいことだと思います。でも、これからの地域創生には、こうした踏み込みも必要だと感じています。
田村:今回のような挑戦は、担当者だけの想いでは実現できません。前例がなく、成果がすぐに見える保証もない中で、上司や関係部署が「地域のためになるなら、やってみよう」と背中を押し、会社として挑戦を認め、応援してくれました。新しいことに挑戦するとき、最初から正解が見えていることはほとんどありません。それでも、「銀行だから難しい」と立ち止まるのではなく、「銀行だからこそ、どうすれば実現できるか」を一緒に考えてくれる。そうした風土が、第四北越銀行にはあります。今回の取り組みは、新しい挑戦を支える会社の風土が形になったプロジェクトでもあると思っています。そして、今回の成果が本格的に見えてくるのは、まだ少し先かもしれません。それでもすでに、営業店からは「普段なかなか会えない方にお会いできた」「お客さまとの親交を深めるきっかけになった」という声が届いています。また、大学からも「大学生のためにこのような招待をしてもらえることは、これまでなかった」と喜んでいただき、次につながるお話もいただいています。これまでの金融サービスだけでは届かなかった方々と、音楽を通じてつながることができた。金融商品の提案ではなく、地域の体験を通じて関係が生まれた。そこに、新しい価値を生み出す手応えを感じています。私たちが目指しているのは、イベントを成功させることにとどまらず、このコンサートをきっかけに、人と人がつながり、企業と地域がつながり、学生と新潟がつながり、世界と新潟がつながる。そこから次のプロジェクトが生まれていく。そうした好循環をつくっていきたいと思っています。




田村:一番大切にしたいのは、取り組みが地域課題の解決につながるか、地域創生につながるかどうかです。観光、文化、医療、教育、まちづくり、産業振興など、新潟にはさまざまな向き合うべきテーマが多くあります。その一つひとつに新潟ならではの強みがあります。たとえ一見すると金融の仕事には見えないことでも、地域の未来につながるのであれば積極的に挑戦していきたいです。金融機関だからこそ持っているネットワークがあります。地域の企業や行政、大学、医療機関、首都圏の企業、海外とのつながりがあります。そのつながりを、地域の未来のためにどう使うか。そこが、これからの銀行に問われているのだと思います。今回のクラシックコンサートは、その第一歩です。これまでの銀行の枠を越え、地域に新しい可能性を生み出していく。その挑戦を通じて、新潟にはまだまだ大きな可能性があるということを、多くの方に感じていただける環境をつくっていきたいです。
※所属は取材当時のものです

開催前には、十分な来場が見込めるのか、金融機関がここまで踏み込んでよいのかという不安もあったと、プロジェクトメンバーの3名は語ります。しかし、東京会場は完売し、新潟会場にも多くの人が来場。世界水準の文化や新しい体験を求める想いが、地域に確かにあることを実感する機会となりました。公開リハーサルで真剣に演奏へ聴き入る学生や、音楽を通じて心を休める医療・福祉従事者の姿も印象的でした。営業面でも、音楽や地域の話をきっかけにお客さまとの対話が深まり、新たな相談が生まれるなど、第四北越銀行が目指す「関係性ビジネス」が形になり始めています。ここで生まれたつながりを、地域課題の解決や新たなプロジェクトへ育てていくことが、次の一歩となるはずです。

